歯の治療も日進月歩。歯も神経もダメになったら抜くしかない時代から、残せる時代に変わってきています。そんな「できるだけ歯を残す」時代に注目されているのが、「根管治療(歯の根っこの治療、歯根治療とも呼ばれています)」です。聞き慣れない言葉ですが、この治療を受けることで、抜歯をしないで済む可能性が大きくなります。また、歯の治療において大事なのは、歯の基礎工事です。ビルを建てても基礎部分の杭を減らしたり、杭が岩盤層に保持されていないと危険なように、歯を保つためには根の部分が大事なのです。
虫歯の放置、歯の亀裂などによって痛みが再発したときに行なう治療です。歯の根っこの部分には神経や血管(歯髄)が通る根管があり、虫歯の細菌がこの神経まで達すると炎症を起こし、歯が痛んだり、歯肉が腫れたりします。 その症状を取るために、細菌に感染した神経を取り除き、根管をきれいに除菌・清掃。無菌状態とし、唾液中の細菌が侵入して再び細菌感染しないように詰め物をして、根管を封鎖するのが治療の目的です。
根管に侵入した細菌が中でどんどん広がり、根にヒビが入ったり穴が開いたりして痛みや腫れがひどくなります。さらには骨も根もダメになり、結果的に歯を抜かなければならなくなってしまう状況に。きちんと物が噛めないなど、日常生活に不都合が生じるようになります。また、インプラントを望まれても、細菌感染が骨まで広がっていると、インプラントそのものができないというケースもあります。
歯の神経は取ってしまったら、それを再び元に戻すことはできません。また、歯の寿命も10年程度短くなってしまいます。ですから、なるべくなら神経は残しておきたいものです。当院でも、神経をなるべく残せるように治療をこころがけているのですが、神経を残せるか残せないかは状況次第です。
「冷たいものがちょっと歯にしみる」「冬はしみるけれどそれ以外の季節はそうでもない」このような場合、当院では神経を抜かずに様子を見ることにしています。また、虫歯が広がって神経に穴が開いているにも関わらず「まったく痛くない」といった人もいます。その場合は神経を保護する薬を塗り、その後特に症状が出てこなければ神経は残しておきます。
皮膚とは異なり、再生能力がない歯の神経は、「何をしても痛い」「ずきずき痛む」などの末期症状にいたると、基本的に自然治癒することはありません。したがって、日常生活に支障が出るほどの痛みがある場合は、痛みを取るためにも神経を取らなければなりません。また、根管が細菌に感染している場合も神経を取ることになります。
根管の神経には、生きている神経と死んでいる神経(壊死状態)があります。
虫歯などによる感染が進行して神経が死んで(壊死して)いる場合、死んだ神経の部屋(根管)内の汚染を取り除いてきれいにする、感染根管処置をしなければなりません。神経を抜いた後に、この処置をせずに詰め物で蓋をしてしまうと、神経を取った根管に細菌が繁殖して、細菌感染が再び起こる確率が高くなります。
判断を迷う患者さまには、「自分の歯だったらこうする、自分の家族だったらこうする」という話をさせていただきます。経過観察はリスクを伴う反面、治る可能性もありますので、リスクをお話しした上で患者さまと一緒に考えていきます。
虫歯が神経まで進行している場合でも神経を抜かずに治癒できる方法として、MTAセメント(神経を保護する薬「覆髄剤」)の使用が注目されています。細菌の侵入を防ぐ効果を発揮するMTAセメントで問題の根管部分を封鎖し殺菌した結果、非常に高い治癒の成功率が得られたという臨床実績がでています。 逆根充(歯根先端方向から詰め物をする)セメントとして使用するEBAセメントの成功率が80%ちょっとであるのに対して、MTAセメントは94%くらいの成功率という臨床実績が得られています。 ただ、MTAセメントは古くからある材料ではありません。また単価が高いため、使用していない歯科医院もあります。当院では、保険適用外のMTAセメントの使用については、歯を残せる可能性の有無で料金が変わります。
人に個性があるように、根管の状況も人それぞれです。特に虫歯を放置していて髪の毛よりも細くなった根管、加齢によって細くなった高齢者の根管は肉眼で見つけることが難しく、根管内治療の難易度も高くなります。 当院ではマイクロスコープ(拡大鏡や顕微鏡)を使うことよって見つけにくい根管を発見し、根管内の感染組織を取り残さない、高度な治療を行なっています。
上の6番目の歯は、昔は3根管だと言われていたが、現在では約半分の方に4根管目が存在するとされています。「この根管は3本で4本目はあり得ない」などと、昔の知識で治療をしてしまうと、4根管目を見逃してしまいます。 肉眼では見つけにくいこともある4根管目の有無を明確にするために、当院ではマイクロスコープ(拡大鏡や顕微鏡)やCTを使って探す発見率を高めています。
通常、根管治療にはステンレス製の器具を使用しますが、柔軟性に欠けるステンス製の器具は直線的な根管には使用できますが、湾曲した根管に不向きです。
根管がまっすぐでない、湾曲している患者さまには、弾力性に富み、しなやかに湾曲に沿って治療が可能な形状記憶合金、ニッケルチタン製を使って治療を行います。
根管治療(歯内治療)は手間がかかる割に地味な作業とあって、細菌対策に必須のラバーダムの使用など、歯科医院で感染対策がしっかりなされていないようなケースも多く見受けられます。そのため、日本の根管治療(歯内治療)は、欧米に較べて再発率が高いといわれます。
細菌感染した根管を除菌、清掃、感染予防する根管治療は、歯を削る治療とは異なり、手間がかかります。さらに、非常に細かく、見えづらい、わかりにくいこともあって、この治療に重点を置く歯科医院は少ないのが現状です。 実際、治療が行なわれていても、残念ながら日本では感染対策がしっかりなされていないケースも多く、日本の根管治療は、欧米に比べて再発率が高いといわれています。きちんと治療をすれば一度で完治する根管治療は、再び感染させないということが重要なのです。 当院には根管治療を専門的に学び、大学病院で治療実績を重ねている歯科医師が在籍しています。装着に時間と手間がかかりますが、感染予防に必須といわれる器具、ラバーダムを使用するなど、手間を惜しまずに根管治療を行なっています。
1問診を行う
2レントゲン撮影し、説明。
患者さまの承諾を得て、クラウン(被せもの)やコア(人工の土台)を除去し、根管治療を行う。根っこの治療は1回では終わらないので、何度か治療を続けながら必要に応じてCT撮影をしていく。
3難治性の根尖性歯周炎
難治性の根尖性歯周炎(※)やフェネストレーション(※)のように、CTを見ないとわからない症状が出た場合は、外科的処置(※)が必要になります。根管ではない場所に穴が開いている場合、昔は抜歯をしていましたが、今はMTA(ミネラル三酸化物)セメントで封鎖、歯を残す処置も可能です。
※根尖性歯周炎=歯根の先端に炎症が起きて膿がたまった状態 ※フェネストレーション=歯槽骨壁の欠損により歯根が露出している状態 ※外科的処置=歯茎を切って骨を削り根尖を切除。一度抜歯した後、再び抜歯窩に歯根を戻す手術(意図的再植術)など
できるだけご自身の歯を残して欲しい!それが当院の願いです。 最新の設備と最高の技術で、あなたの歯を残すことを全力サポートいたします。